【点差の要因】
滋賀レイクスターズが創設7年目にして初めての有明進出を果たしました。当ブログを始めて6年、初めて有明の記事を書かせて頂きます。
第一クォーターは両チームの今シーズンの戦いの凝縮版の様なオフェンスになりました。レイクスは岡田選手の非凡なるバスケットIQが展開されます。スリーポイントのチェックが厳しいと見るやすかさずペネトレイトでフリースローを量産します。岡田選手の場合はドライブインではなくペネトレイトというのが鍵で、ドライブが出来る日本人選手は多いですが、ペネトレイトが出来る日本人選手、特にシューティングガードでそれが出来る選手は意外と少ないのです。
対するフェニックスは的を絞らせない多彩なオフェンスを仕掛けます。強力な外国人選手からの得点、太田敦也選手のインサイド、大口選手、慎之介選手のアウトサイド、並里選手の内と外。両者一歩も引かない試合運びとなりました。
第二クォーター、滋賀は浜松のポストアップを防ぐための3-2ゾーンを敷きます。これが上手く作用し、またもや岡田選手のペネトレイトから加点。しかし浜松もそれならばとジャメイン選手のアウトサイドが決まります。滋賀は同じオフェンスの展開でシュートがなかなか決まらずにフラストレーションが溜まる雰囲気に。一方浜松もナイル選手の連続スリーが決まりますが上手く量産出来ません。
しかし、浜松は辛抱強くパスを回してフリーを作る意思統一が図られていました。滋賀もウッドベリー選手を起点としてピックアンドロールを展開するなど、何とか打開策を見つけようとします。ここで浜松の大口、慎之介両選手が球際に対する執念のディフェンスを見せ、ジワリジワリと流れを浜松に引き寄せます。
大口選手と慎之介選手のコンビももうはや3シーズン。思えばこの二人は互いにポジションを競い合いながら、しかし大口選手が慎之介選手を育てるという師弟関係を続けてきました。大口選手が簡単に慎之介選手にポジションを与えなかった事。これが結果的に慎之介選手を強く鍛えてきました。そして僕が見事だと思ったのが、やっと慎之介選手が大口選手の持ち味である球際に対する執念を今シーズン見せる様になった事でした。後半チャロー選手のスリーが飛び出したりするなど、浜松がやや優位な展開で前半を終えます。
第三クォーター、オフェンスリバウンドからの岡田選手のスリー、しかし負けじと大口選手もスリーでやり返します。そして次のポゼッションで大口選手が岡田選手からオフェンスファールを奪います。正直なところ岡田選手と大口選手とでは岡田選手の方が優位なミスマッチ、しかしそれを大口選手が自分の持ち味を遺憾なく発揮しカバーします。
両チームともこの第三クォーターは我慢の時間帯でした。流れが欲しいレイクス。そうはさせないフェニックス。安易なアウトサイドを避けて、丹念にインサイドを突き、フリースローを獲得します。しかし浜松の方が肝心なところで良いポジション取りのリバウンドを拾いました。オルー、チャロー、ナイル、派手な選手が多い中、肝心なところで実に地味なプレイを大切にしてきます。
そして第4クォーター、浜松は序盤からミスを連発します。しかしレイクスはそのミスからの速攻でターンオーバー、そして横江選手が珍しくフリースローを外します。しかしそれまであまり得点出来ていなかったウッドベリー選手がリングに渾身のアタックやスリーポイントを決めついに滋賀が逆転に成功。しかし浜松がタイムアウトを使い切ってまで出した指示は『ディフェンスの立て直し。』でした。
浜松を見ていると、みんながどれだけ劣勢に立たされようとも「それぞれの持ち場を死守する。」そんな気迫がこもっていました。そして残り2分を切った場面。それまでチームの為に泥臭い事を頑張った大口選手のスリー、そして慎之介選手の渾身のドライブ。まるでチームがこの二人に感謝を込めるかの様な連続得点で浜松東三河フェニックスがウェスタンカンファレンスファイナルを制しました。
四方山話
点差の要因は色んな要素があると思いますが、一つ挙げるとしたら、滋賀レイクスターズの特徴として、一試合におけるDNPの選手の多さがあったのではないでしょうか。一方、フェニックスのこの試合のDNPは怪我による岡田慎吾選手ただ一人でした。
元々滋賀レイクスターズは昔から非常にDNP選手が多いのが特徴的です。元々ベンチメンバーから育った選手は横江選手くらいで、それももし伸也キャプテンの怪我がなければ果たしてどうだったでしょうか。これはこのチームがカルチャーよりもエコノミーを優先してきたからだと思います。しかし京都ハンナリーズも琉球ゴールデンキングスも実はDNP選手が少ないのです。何も無いところから始まった市民球団のレイクスにとってエコノミーは言わば生命線。もしかしたらその為に有明に7年の歳月が必要だったのかもしれません。
しかし有明に来てまず感じたのは、有明という会場は非常に暑い会場です。なので主力選手でも必ず休ませる時間帯が必要となってきます。いや、それ以前にこの一発勝負に勝利するためには一つでも多くの引き出しが必要となってくるのが、今回の浜松東三河フェニックスの勝利を見て明らかだったと思います。ポイントガード一つ取っても、並里パターン、大石パターン、ナイルパターン、これによる相手チームに与えるダメージが大きいのは確実です。その為には色んな選手から可能性を見い出す必要性を感じます。
東野ヘッドコーチはシーズン中、どちらかというとナイルマーリー選手に地味な仕事をさせてチャロー、オルー選手を中心に勝利を積み重ねてきました。そしてプレイオフに入るとナイル選手を全面に押し出し、一気に有明まで駆け上ってきました。これからのレイクスの課題は如何に全員バスケットで戦い、一枚でも多くの武器を持つ事が出来るか。ここにある様な気がしました。
この場所に初めて滋賀レイクスターズの旗が掲げられました。今シーズンの滋賀は遠山ヘッドコーチという情熱的な指揮官を迎え入れました。宮崎よりも沖縄よりも奈良よりも、一番滋賀が大変だったと語るヘッドコーチ。僕にはその意味が痛いほどよく分かります。
プレシーズンマッチの時のコーチの憔悴しきった表情。『こんな大変な仕事.....。』初めてコーチから聞いた弱音でした。ヘッドコ-チはみんな同じ。勝てば官軍負ければ賊軍。しかし色んな苦しみを経てコーチは『それは仕方が無い事なんです。それも僕らの仕事の一つなんです。』と噛み締めます。
ありがとう滋賀レイクスターズ、遠山ヘッドコーチ。ここに滋賀の旗を連れて来てくれて本当にありがとうございました。
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ターキッシュエアラインズbjリーグ 有明ファイナルズ ウェスタンカンファレンスファイナル~
5月23日(土) ○浜松東三河フェニックス 82 − 77 滋賀レイクスターズ●
1Q 21−20
2Q 26−22
3Q 16−14
4Q 19−21