5月10日(日)京都ハンナリーズ 対 滋賀レイクスターズ 戦

せん(閃)

2015年05月15日 10:26

ターキッシュエアラインズbjリーグ プレイオフカンファレンスセミファイナル~

第一戦は80 対 74で辛くも滋賀レイクスターズが逃げ切った第二戦、もし滋賀がこの第二戦で決めなければ京都ハンナリーズが有明の切符を手にするだろうと確信していました。

第一クォーターからハンナリーズは激しいディフェンスでレイクスにプレッシャーをかけ、レイクスのポイントゲッター達の足をまずは止めようとします。日本人ガード陣はフェイスガード、モーションオフェンスはパッシングダウン、この二つを心掛けてきました。一方のレイクスはファストブレイクでターンオーバを連発。ファストブレイクの時に岡田選手にだけは絶対に好き勝手にさせてはいけないという気迫がこもっていました。

第二クォーターに入ると今度はその岡田選手がやり返します。京介選手を振り切りドライブ、スリー、そしてトラップからのブレイク。ここでハンナリーズはタイムアウト。後が無いハンナリーズは絶対に岡田選手を乗せる事だけはしてはいけない事を再確認するタイムアウトでした。

レイクスは試合を通じてレジー、ケビン選手のインサイドに対しては徹底したダブルチームを取りました。遠山ヘッドコーチは『ここ3、4試合でやっとディフェンスが完成しました。』と語ってくれましたが、このレイクスディフェンスが出来たのは、偏に“京都ハンナリーズの岡田優”が居なかったから可能だったと思います。

しかしそれならばとライアン、レジー選手のアウトサイドが決まります。このレジー選手の対応力の高さには息を飲みました。2006-2007シーズンから7シーズンに渡りbjリーグに名を轟かせてきたレジナルド選手、流石でした。

第三クォーターは互いにアップテンポな展開で始まります。レイクスにとってはファールトラブルだったので、オフェンシブな試合運びは好都合だった筈ですが、二人のディフェンスの間の突破を図ろうとするなど、レイクスは突いてはいけないドリブルが多かったです。

そしてこの日はとにかくライアン選手を止める事が出来ません。アウトサイドだけならまだ対応出来たかもしれませんが、フェイクからのペネトレイトがライアン選手の場合、ホップが柔らかい為にブロックが非常に難しいのです。しかしレイクスも気を取り直してヨコ選手のペリメーター、岡田選手のペネトレイト、クリス選手のインサイドで必死に食らいつきます。この第三クォーターの攻防は是非とも全てのbjブースターの皆さんに見て頂きたい内容でした。

そして運命の第四クォーター、両チーム共に絶対に負けられない最後の10分が始まります。5月に入って非常に安定しているヨコ選手のミドルから始まります。しかしハンナリーズもすかさず内海選手のスリーポイントが炸裂。そしてこのクォーターもライアン選手のシュートが全く落ちません。その焦りからか、レイクスに早打ちが目立つ様になります。

それでもレイクスもヨコ選手、ジェフ選手のペネトレイトで必死に追いすがりますが、ハンナリーズの押し上げ気味のチームディフェンスが、ここ数試合でレイクスが出来ていた“我慢”を消し去ってしまいました。こういう最後の最後、一番苦しい時にチームで戦えるか、それともセルフィッシュに走ってしまうか。この時に僕は1位と4位の力の差を感じました。

レイクスが有明に行くためには絶対に落としてはならない第二戦目をハンナリーズが勝利する結果となりました。

さて、最終決定戦です。何故僕が最終決定戦まで縺れるとハンナリーズが勝利すると思ったのかというと、それはホームアドバンテージが大きく影響を及ぼすからです。ハンナリーズの1ゴールの度に湧き上がるもの凄い歓声。昨シーズン同じ場所でその凄まじさを目にしていたので確信していました。

とにかく超短期決戦なので出だしでイニシアティブを取れるかどうか。レイクスがそれを掴みかけた瞬間にまたもやライアン選手が立ちはだかります。ライアン選手は完全にモードに入っていました。特に12点目のライアン選手のスリーポイントの時に完全に流れは京都に行ったと思いました。

そしてこの勝負に決着をつける最終決定戦の後半、滋賀は痛恨のオフェンスチャージとターンオーバー。この次のプレイでどちらのチームのシュートが決まるかだったと思います。そしてそれを決めたのがパルマー選手の2本のFTでした。完全に勝負ありました、本来なら完全に。

しかし僕自身を見誤らせてくれたもの。それはレイクスにはレイ選手とジェフ選手という浜松V2を成し遂げた選手がいてくれた事でした。レイ選手の起死回生、価千金のスリーポイントが決まります。続いてまたもやレイニクソンが3つのFTをきっちりと決めてくれます。レイクスが完全に息を吹き返しました。点の取り合いになればレイクスは勝負になります。足を動かせる展開になればレイクスの土俵です。パルマー選手の3ポイントが飛び出し同点。しかし今度はジェフ選手がここで価千金のミドルを決めます。

そしてパルマー選手がレイのプレッシャーディフェンスの時にタイムアウト要求。しかしハンナリーズにはタイムアウトが残っていませんでした。パルマー選手ほどのバスケットIQが高い選手でも、試合の波に飲み込まれる事がある。バスケットの恐ろしさをまざまざと思い知らされた瞬間でした。ハンナリーズベンチテクニカルが取られ、レイクスにフリースロー。そしてレイクスボール.....。

僕が初めてレイ、ジェフ選手を見たのは浜松がV2を成し遂げたシーズン前のOSGスクエアでした。大抵どこのチームでも全体練習が終わると外国人選手は次々と帰っていきますが、そんな中一人黙々とスリーポイントレーンを一足ずつずらして、それこそ百本単位で居残りシューティングをする外国人選手がいました。その選手の名はジェフリーパーマー。額の汗を拭おうともせず、ただ黙々とシューティングをしていました。何でしょう、理由はわからないのですが、この選手をとんでも無い選手に感じたのを今でもよく覚えています。

思えばジェフは毎シーズンの様にレイクスの前に立ちはだかりましたね。そのジェフがレイクスの為にこの場面でシュートを決める。彼はこういう時に仕事をする男。今だから言えますが、昨シーズン遠山ヘッドはよくこう漏らしました。『レイやジェフが居てくれたら.....。』

レイクスが球団創設以来の悲願を達成しました。

浜口炎ヘッドコーチのバスケット哲学は3つあります。

Respect each other

Fundamentals beat talent

Play defense Play hard Play together

今シーズンのハンナリーズは正にこの3つのチームでしたが、一番僕が感じたのが「Play defense Play hard Play together」よりも、「Fundamentals beat talent」でした。恐らくbjリーグの中で最も平均年齢が高いチームだったと思います。それでもみんなで力を合わせれば最少失点と最高勝利数を更新する事が出来る。とてつもなく大きな事を成し遂げたと思います。

遠山ヘッドコーチが何故このセミカンファレンスを勝つ事が出来たかと言うと、あまりにも浜口ヘッドコーチが成し遂げた事が偉大過ぎたのが原因だったのかもしれません。この対戦カードは事実上もう早くから確定的でした。そんな偉大な京都ハンナリーズに対して生半可な事をやっていたのでは全く話にならない。どれだけ憎まれても叩かれても絶対にレイクスを変えなければならない、そう本気にさせてくれたからだったと思います。

しかしここからがこの二人のヘッドコーチの本当の戦いの始まりだと僕は思います。僕はこの戦いを最後まで、固唾を飲んで見守っていきたいと思います。元秋田ノーザンハピネッツの菊元トレーナーがこんな言葉を残しています。

『勝負の世界にいるからには“結果”は絶対に必要だが、“結果”だけを見たとてチームに未来は無い。チームにとって何が大切なのか?。勝ち負けと同じくらい大切な何かが、そこにはあるのではないか?。』

その“何が”大切なのか、それを知ってみたいのです。だから静かにその答えをこの二人の戦いの中から見い出していきたいと思います。

僕はこのセミカンファレンスのMVPはチーム全員、と言いたいところですが、敢えてクリスホルム選手が一番相応しいと思いました。それは何故かというと、クリス選手が必ず心がけていたボックスアウト、これがレイクスに奇跡を舞い込ませてくれたからと思うからです。クリス選手がケビン選手に許したオフェンスリバウンドは初日2つ、二日目も2つ。ちなみに過去に敗戦した試合では5つ以上。これはクリス選手がケビン選手にハンドボックスアウトを忘れずに実行してくれたからに他なりません。

このプレイは得てして疲れてくる時間帯、集中力が切れてくるとどうしても散漫になってしまいます。ケビン選手はストレートカットが卓越した選手なので、特に大変だったと思うのです。ライアン選手のアウトサイドをあれだけ捨ててでもレジー選手とケビン選手をとにかく羽交い締めにしようとチャレンジしたレイクス。今シーズンのハンナリーズはパルマー、ライアンのアウトサイドではない。レジー、ケビンのインサイドで士気を高めてきた事を遠山ヘッドはしっかりと見抜いていました。

クリス選手が帯同出来なくても何とかキングスからは勝利出来ました。しかしハンナリーズに対してはそれは到底不可能でした。仙台89ERSのホームゲーム終了後、会場のゴミ掃除をしていたクリスホルム選手。それらは全て浜口ヘッドコーチの指導の賜物でした。そんな恩師の目の前で成長した姿を見せられた事が本当に素晴らしかったと思いました。

我々は正しくプレーします。選手達にプラスのエネルギーを送って欲しい。』このセミカンファレンス、この言葉が言霊としてチームに乗り移ったかの様でした。特にレイクスブースターの皆さんに対してその影響が大きかったのではないでしょうか。気負わず、卑屈にならず、邪念も無い。心は自然に、身体は柔道の様にしなやかに、そんな雰囲気がアウェイスタンドに満ち溢れていました。「何だろう、この皆さんの落ち着き様は。」本来なら“昨年の悔しさが”みたいなものが闊歩してもおかしくはなかったのに。これが遠山向人という人の正しさの力なのか、そう思いました。

レイやジェフがファールの判定を不服としても、それを必死でヘッドコーチが止めました。味方のハッスルプレイでメンバーがベンチを飛び出そうとしても、レイが必死になってそれを制止しました。ファーストラウンド終了後、遠山ヘッドは僕にこう囁かれました。『実は僕は、レイクスブースターさん達も正しく導きたい。そう思っているんです。』

でもそれは、レイクスブースターさん達が『レイクスに行きたい。』とやって来た遠山向人ヘッドコーチを温かく迎え入れて下さったからこその賜物だったと僕は思っています。

四方山話

『せんさんの為に、レイやジェフを取ったのに.....。』

もちろんそれは冗談ですが、でもその気持ちが本当に嬉しくてついて行こうと決心した言葉でした。

『竜児君と向人君を応援してあげてね。』僕にとっても母みたいな方が野洲で下さった言葉。

『ダメ、遠山がダメ。全部アイツが悪い。今日はこれから相当叱る。』僕にとっても父みたいな方が横手で下さった言葉。

この日のこの瞬間、父と母の姿が思い浮かびました。この方々が居なければこの光景を目にする事は出来なかったと考えると、ただただ感謝の気持ちでいっぱいでした。

良かったね向人ヘッド、やっと親孝行が出来て。本当におめでとうございました。

NETZKyoto ✖ Volkswagen京都右京 Presents
5月10日(日) ○京都ハンナリーズ 81 − 73 滋賀レイクスターズ●

1Q 26−17
2Q 18−19
3Q 17−21
4Q 20−16

最終決定戦 ●京都ハンナリーズ 20 − 25 滋賀レイクスターズ○

1Q 12−08
2Q 08−17


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